「相続財産」とは?対象になる遺産の種類
「相続財産」とは相続や遺贈などの死亡を要因として引き継ぐことになる被相続人の一切の権利義務のことです。「一切の権利義務」とあるように、プラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産についても相続財産となることがポイントです。
ただし相続財産すべてに対して相続税が課税されるわけではなく、相続税がかかる財産とかからない財産に分かれます。
1.相続税がかかる「課税財産」
相続税がかかる財産(課税財産)について、国税庁のタックスアンサーでは「金銭に見積もることができるもの全て」と定義しています。
では、具体的にどのような相続財産が相続税の課税対象となるのでしょうか。
・現金・預貯金
被相続人名義の普通預金、定期預金、さらには財布に入っている現金やタンス預金は、相続税がかかる課税財産となります。また相続人名義の銀行口座で、実態として被相続人が管理していたような「名義預金」についても、課税財産となりますので注意が必要です。たとえば口座名義が妻で、夫の収入を妻名義の口座に預金していたような場合が該当します。
・電子マネー
SuicaやPASMO、ウォレットなどの電子マネーや、そのほかスマホアプリへのチャージ金額などについても、残高に応じた資産価値があると考えられるため、課税財産となります。電子マネーは、オンラインでIDとパスワードで管理されており、それらが特定できないと、残高の確認や相続の手続きが進まなくなることがあります。
そのため、IDやパスワードを管理している場所を財産目録や遺言書に残すなどの対策が必要になります。
・有価証券(株券・小切手など)
被相続人が保有していた株式や小切手などの有価証券は課税財産となります。株式は上場、非上場に関係なく、どちらについても課税財産となりますが、評価方法に違いがあるため注意が必要です(詳細は後述します。)配当金などが振り込まれている可能性があるため、被相続人の通帳を確認して有価証券の存在を特定します。また、インターネットの履歴やメールを確認するという方法もあります。
・不動産(土地・建物など)
被相続人名義の自宅や賃貸アパート、マンション、別荘、駐車場、ビルなどの不動産は課税財産となります。ただし、不動産は、所有していることを家族にも秘密にしているケースがあるため、洩れのないよう確認することが重要です。基本的には、自宅に保管されている「登記済権利証」や「登記識別情報通知」、「登記完了証」といった書類を確認できれば確実ですが、見つからない場合は市町村役場から毎年届く納税通知書の控えからも確認することができます。また、所有している可能性がある不動産の所在地がわかる場合は、所在地を管轄する市区町村役場で「名寄帳」を取得することで、所有している不動産の詳細がわかります。
・動産(貴金属・自動車など)
指輪やネックレス、イヤリング、腕時計などの貴金属、書画や絵画などの骨董品、ダイヤ、真珠といった宝飾品などは、経済的な価値があるため、原則として課税財産となります。その他にも、高級家具や家電製品、ビンテージもののアパレル用品などについても、ものによっては課税財産となる可能性があるため確認が必要です。また、被相続人名義の自動車やバイク、船舶などの動産についても対象となります。
・権利関係(著作権・ゴルフ会員権など)
被相続人が権利を持っていた「知的財産権」なども課税財産となります。具体的には、著作権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などがあります。どのような権利を保有しているのかは、確認することが非常に難しいため、できる限り亡くなる前に本人に確認しておきましょう。なお、特許権は、特許庁の特許原簿で確認することができます。また、被相続人名義の電話加入権やゴルフ会員権についても、課税財産となります。
・贈与財産
相続開始前3年以内に贈与された財産は、死亡する直前の贈与による相続税の課税逃れを防止するため、課税財産として扱われます。また、「相続時精算課税制度」で贈与された財産も課税財産に含まれます。なお、3年以内の贈与、精算課税ともに一定の贈与税を相続税から差し引きできます。
2.相続税がかからない「非課税財産」
・祭祀財産(お墓・仏具など)
墓地や墓石、仏壇、仏具、その他神仏や先祖を祀る道具などは、崇拝の対象であれば、人の信条にも重要な影響を与えることに鑑みて、非課税財産に該当します。ただし、どんな高額なものでも必ずしも非課税になるとは限りません。たとえば、骨董品的な価値があり市場で高額で売却できるようなものや、一般的な常識から逸脱したような極端に高額なもの(明らかに節税対策ととれるものなど)は、税務調査が入った際に非課税財産から外される可能性がありますので注意しましょう。
・寄付財産や公益事業の財産
祭祀財産と同様に、その性質から相続税を課すのが適切ではないと判断される以下のような財産も非課税財産となります。宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの。精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利。個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で、相続人のいずれかが引き続き経営にあたる場合で一定の要件を満たすもの。
・死亡保険金の非課税分
生命保険には、相続人が受け取る場合に限り「500万円 × 法定相続人の人数」の非課税枠があります。そのため、非課税枠内の死亡保険金は、取得したとしても相続税がかかりません。また、生命保険金は相続放棄したとしても問題なく受け取ることができますが、相続人ではなくなるため、非課税枠の適用は受けられません。一方で、相続放棄していない相続人が生命保険金を受け取った場合の非課税枠の計算には、相続放棄がなかったとした場合の相続人の人数で計算します。混同しやすい部分なので注意しましょう。
・死亡退職金の非課税分
生命保険と同様に「500万円×法定相続人の人数」の非課税枠があります。
・課税価格から差し引く「債務」
相続財産はプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も含まれます。たとえば、1億円の預金があったとしても、6,000万円の借金があれば、相続税の課税対象となるのは「1億 - 6,000万円 = 4,000万円」となるため、相続税を計算する際にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産についても洩れなく確認することが重要です。
・葬儀費用(葬式・通夜の費用など)
被相続人のお葬式にかかった費用についても、マイナスの財産としてプラスの財産からマイナスすることができます。